井柳俊紀
東京都世田谷区用賀4‐5‐23 B1階 03-5797-9595
略歴
金沢大学医薬保健学域医学類を卒業後、東京医療センターで初期研修を修了。ローテーション中に出会った総合内科の恩師・片山充哉先生に強く影響を受け、同院総合内科へ入職。当初は米国での内科研修を志すも、研修の一環で関わった在宅診療を通じて、質の高い在宅医療の重要性とその大きな需要を実感し、在宅診療の道へ進むことを決意。
2025年3月にOpus One Clinicを開院し、がんや神経難病をはじめとする重症患者を中心に、地域や医療機関から信頼される存在を目指して活動している。
現在の仕事についた経緯
在宅診療に携わる中で強く感じたのは、病院ではなく「自宅で過ごしたい」という患者様やご家族の願いに応えることの大切さでした。重い病を抱えていても、最期まで自分らしく暮らすことを支える医療こそ、自分が進むべき道だと確信しました。
その思いから2025年にOpus One Clinicを開院しました。患者様が安心して療養できる環境づくりと、ご家族を含めたトータルな支援に力を注いでいます。
医療を単なる治療行為ではなく「人生を彩る体験」として届けることを理念としています。
仕事へのこだわり
新人の頃から私が徹底してきたのは「即レス」と「あいさつ」です。相手の不安にすぐ応じ、誠実なあいさつで関係を整えることは単なるマナーではなく信頼の入口です。相手を安心させる小さな行為の積み重ねが、結果として診療の質を高めることを実感してきました。
この基盤を形作ったのが、総合内科で出会った恩師・片山充哉先生です。先生は仕事には厳しく、常に「under time pressure」で仕事をすることを求められます。あらかじめ2人で決めた時間設定のなかで一つ一つの業務をこなし、報告・相談・意思決定をしていく仕事の進め方を学びました。まさにドラマ“suits”のような世界観でした。
一方で患者様にとって大切なことは、「痛くないように、苦しくないように、そしてゆたかに」過ごしていただくことだと常に教えてくださいました。そしてその姿勢は、日常のやりとりにも反映されていました。先生は「I messageではなくYou message」を重んじ、「私がこうしたい」ではなく「あなたがこうなれば嬉しい」と伝えることの大切さを教えてくれたのです。
私自身、糖尿病の患者様にインスリン導入を勧めた際、最初は「数値が安定するから」と説明しても受け入れていただけませんでした。しかし「この治療で元気に過ごせれば、お孫さんと会う機会がもっと増えますね」と伝えたところ、患者様は前向きに取り組んでくださいました。ここにも、即レスやあいさつと同じ「相手の立場に立つ姿勢」が通じていると実感しました。
私は常に最新の知識を学ぶことも重要だと思っており、米国内科学会のpodcastを毎週確認し、グローバルスタンダードの情報を取り入れています。
そしてそれを一方的に押し付けるのではなく、患者様やご家族の希望を確かめながら、共に方向性を奏でる「セッション」のように診療を進めることを心がけています。
若者へのメッセージ
研修医や若手の皆さんに伝えたいのは、“文句を言いながらやるのはかっこよくない”ということです。私の周りにも自分の待遇の悪さ、逆に他人の待遇の良さについて不平不満をもらす医師がいます。しかし、文句があるならやめればいい、羨ましいなら自分もやればいい。それ以上でもそれ以下でもありません。
また職場の関係や価値観が全てではないことも覚えておいてください。今いる環境で合わないことがあっても、それは人生やキャリアの一部に過ぎません。視野を広く持ち、自分が大切にしたい価値や目標を見失わずに行動することが大切です。置かれた場所で咲くのではなく、咲ける場所に身を置くことが大事です。
医療業界も変革が進み厳しい世界となっていますが、まずは自分で考え、判断して動くことが重要です。周りの評価や不平不満に振り回されず、自分のスタイルで学び、行動する姿勢こそが信頼を生み、自分自身の成長につながります。