栗山拓也
略歴
1996年、神戸大学口腔外科病院卒後研修後、複数の歯科医院で臨床経験を積み、歯周病治療やインプラント、審美歯科など幅広い分野で技術を磨く。2000年に栗山歯科を開院。2020年には事業構想大学院大学を卒業。
2022年、兵庫県芦屋市に「芦屋ラポルテ歯の予防クリニック」を開院。院長として「治療」中心の歯科医療から脱却し、口腔全体の健康を生涯にわたり守り育てる「予防歯科」を診療の核に据える。患者との対話を重視し、「削らない・抜かない」を基本理念とした、一人ひとりのライフステージに寄り添う丁寧な医療を提供している。
さらに、「誰もが安心して使える本物を提供したい」という想いから、臨床現場での知見を活かして2017年にCELUMIX株式会社を設立し代表取締役に就任。同社では、天然由来成分を活用したオーラルケア製品の開発・販売を手掛けるなど、医療の枠を超えたウェルネス事業を展開している。
歯科医師としての臨床経験と、企業経営者としての視点を併せ持ち、芦屋を拠点に新しい形のヘルスケアを多角的に提案している。
現在の仕事についた経緯
私が歯科医師を志した原点は、幼い日に訪れた歯科医院の、柑橘系が爽やかに香る待合室にあります。
そこで待っていたのは、痛い治療ではなく、優しい歯科衛生士さんによるブラッシング指導と、ミントが香るフッ素塗布でした。それは、歯が専門家の手で守られる心地よさと、「自分の歯を大切にする」ことの本当の意味を、私が初めて知った瞬間でした。
「治療」ではなく「予防」、その考え方に触れたことで、歯科医院は「怖い場所」から「未来の健康を育む場所」へと、私の心の中で姿を変えました。「上手にできたね」と先生に褒められた小さな成功体験は、幼心に大きな自信を与えてくれ、痛みを伴わずとも人を笑顔にできるこの仕事の尊さを、肌で感じた原体験です。
あの日の感動と安堵感は、やがて「今度は自分がこの価値を伝える側になりたい」という強い願いに変わりました。患者様が、ご自身の歯を一生涯守るための知識と安心感を得られる場所。私が作りたいのは、かつて自分が体験したような、希望に満ちた歯科医院です。
あの日の記憶こそが、今の私の全ての礎となっています。
仕事へのこだわり
私の仕事の流儀は、新人歯科医師として抱いた一つの問いから始まりました。
それは、痛みを訴える患者様を前に「なぜ、もっと早くこれを防げなかったのか」という、治療中心の医療への根源的な疑問です。歯を削り、詰めるという日々の臨床の中で、対処療法だけでは真の健康は守れないという現実に直面しました。
その問いへの答えを探す旅が、私の「予防」を核とする現在のスタイルを築き上げました。
「削らない・抜かない」は単なる標語ではありません。患者様と共に口腔の未来を描く——その決意の証です。私はその哲学を現実にするために芦屋ラポルテ歯の予防クリニックを創り、診療室を“処置だけの場所”から“再発を許さない予防の拠点”へと変えました。ここは、私の理念を息づかせるための舞台であり、患者様と一緒に未来を設計していくための場なのです。
そして私のこだわりは、クリニックの枠を越え、CELUMIX社の製品開発へと繋がります。プロのケアと、家庭での安全なセルフケアが両立してこそ、真の予防は完成します。新人時代に抱いた純粋な問いからブレることなく、アルファDCマウスウオッシュなど“整菌”発想のプロダクトで医療と日常を滑らかにつなぐ挑戦を続けています。
研究・法規・マーケティングを横断しながらも、根底にあるのは「患者様(生活者)にとって本当に役立つか」という一点です。現場感覚を失わず、エビデンスと情熱を両輪に今日も“未来の当たり前”を静かに形にし続けています。
若者へのメッセージ
この街で若い世代を見ていると、ふと昔の自分がよみがえります。今は情報が溢れ、スマホを開けば誰かが眩しく輝いて見える。焦るなと言うほうが無理ですよね。
だからこそ伝えたいのは「思い切り格好悪い失敗を重ねても、何ひとつ損はしない」ということです。振り返れば、成功よりも「なんであんなことしたんだ」と笑える失敗の方がずっと心に残り、今の自分を形作っていると気づきます。
周りの視線は横に置いて、まずは自分が「面白い」と感じることに飛び込んでください。それが何に繋がるかは、今はわからなくてもいいのです。でも、何かに本気で夢中になった時間だけは、決してあなたを裏切りません。
この日本のどこかで、あなたの挑戦を本気で応援しています。