株式会社皇蘭

千田昌彦

神戸市灘区大石南町2-2-2 078-861-1656

株式会社皇蘭 千田昌彦

略歴

1970年生まれ、兵庫県出身。大学卒業後に飲食チェーンに入社。5店舗から270店舗超への拡大を牽引し、取締役本部長などを歴任した。退職後は東京でコンサル事業を立ち上げ、2021年に「皇蘭」へ副社長として参画。赤字だった同社を1年半で黒字化し、2022年に社長就任。現在は老舗ブランドの再建と全国展開に取り組んでいる。

仕事へのこだわり

『嫌いなことは続かない』——大学時代、朝の通勤電車に乗る前から疲れた社会人の姿に、「これから仕事に向かうのになぜ疲れた顔で通勤するのか」そう疑問に思い、自分で考えて動ける仕事がしたいと感じました。そして、業界にこだわらず“面白そう”という直感で選んだのが飲食会社でした。将来独立できる人たちを育てられるような会社にしたいという思いを持ちました。

卒業後に入社したのは、岡山県倉敷市に本社を構える飲食チェーン・株式会社ピアーサーティーです。入社時は数店舗だった同社は270店舗超にまで拡大、そんな急成長の中核を担い、取締役本部長・取締役経営戦略室長を歴任しました。店舗開発からメニュー構築、海外進出まで多岐に渡る経験を積みました。
退職後は東京を拠点にコンサルティング事業を起業。飲食業だけでなく、美容クリニックや高級クラブなど業種を問わず、“相談されれば何でも揃う”ワンストップ支援で信頼を築いてきました。

そんな私が「皇蘭」と出会ったのは2021年のことです。コロナ禍で経営が傾き、年間約1.3億円の赤字を抱えていた老舗中華ブランドの再建を任され、副社長として入社しました。実は皇蘭は、ゆかりのある神戸で幼少期から親しんでいた味でもあり、「このブランドを絶やすわけにはいかない」と再建に踏み出しました。

まず着手したのは社内の意識改革です。社員全員と面談を行い、昭和的な価値観を一つひとつ問い直しました。「量をこなせば儲かる」という古い考えを見直し、「働けば働くほど利益が出るわけではない」「働きやすさと成果の両立」を浸透させました。その象徴が定時退社の奨励です。業務効率化と信頼関係構築に注力し、社内には徐々に笑顔が戻っていきました。

同時に、経営面でも大ナタを振るいました。最大380品目にも膨らんでいたOEM商品を精査し、不採算のものを大胆に削減。「頼まれたら断れない」という創業期の人情主義が裏目に出ていた状況を改め、取引先とも正面から向き合い、時には罵声を浴びながらも条件交渉を成立させていきました。
その結果、商品点数は70品目前後にまで集約。経営は見事黒字化し、2022年10月、正式に代表取締役社長へ就任いたしました。

現在の皇蘭は、創業以来の看板商品「豚まん」に加え、高単価・高粗利路線への転換を進めています。神戸牛を使ったプレミアム肉まんや、老舗洋菓子とのコラボで生まれた「杏仁ショコラ」など、高付加価値商品を続々と展開。価格競争から脱し、「ブランドの力で、まだ見ぬ顧客を引き寄せる」戦略に舵を切っています。

2024年4月には、法人名も「株式会社北海」からブランド名そのままの「株式会社皇蘭」へと変更。社名とブランドの統一によって、より一層「皇蘭」の名を前面に押し出す体制を整えました。今後は東京をはじめとする全国展開も視野に入れ、アンテナショップの開設など都市圏への進出も進行中です。関西では強力なライバル(551蓬莱など)が存在する中、ブランド価値で勝負できる市場を見極めて動いています。

また、皇蘭改革は、「第三者承継」の成功事例としても注目されています。創業家でも、内部昇格でもない、外部人材による段階的な承継モデルです。副社長としてまず現場に入り、信頼と成果を積み上げてから社長へ昇格するという“ソフトランディング型”の移行は、中小企業の事業承継問題における新しいヒントとなっています。

歴史ある地元ブランドを、次世代へつなぐのが自分の役目だと考えています。挑戦は、神戸の街に、そして全国の中小企業に新たな希望を灯すと考えています。